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「これだけ体操」のおかげで腰を動かしても痛くないという実感が

公開日: : 腰痛を改善する運動・動作

腰痛があっても活動的に過ごすのが大事

腰痛に対する不安は、「恐怖回避思考」と呼ばれています。

恐怖回避思考は、ウイルスのようなものです。このウイルスに感染すると、人は腰を大事にしようと思うあまり、活動性が低下します。その結果、腰痛の回復が遅くなったり、再発を招きやすくなったりという悪循環に陥るのです。

この悪循環が続くと腰が治りづらくなるばかりではなく、脳機能の不具合が高じて思い悩み、いよいよ慢性腰痛から抜け出せなくなります。

腰痛持ちから脱却するためには、安静第一ではなく、できるだけ活動的に過ごすことが重要なのです。

この潮流を決定付けたのが、15年以上前にオーストラリアのビクトリア州で実施された「腰痛に屈するな!」キャンペーンでした。このキャッチフレーズを旗印に、腰痛に悩む人たちに運動を勧め、日ごろからよく体を動かすように求めるメッセージCMをテレビなどでくり返し流し続けたのです。

この結果、このキャンペーンの行われなかった他州と比べると、ビクトリア州では恐怖回避思考が改善し、腰痛患者が減少しました。保険の請求額も減少し、医療費(傷害保険請求)を15%も軽減できたのです。

映像を見ただけで4割の腰痛が改善

2015年春、東京大学特任助教の松平浩先生は、NHKと協力して、腰痛対策のメディアキャンペーンを行いました。これは、先に説明したオーストラリアのメディアキャンペーンをモデルとしています。

1本1分程度の長さの映像を5本作成し、最近の腰痛対策の新しい常識を紹介しました。

例えば、ヘルニアです。ヘルニアになったら手術をしないといけないと信じている人が多いことでしょう。しかし、大きく飛び出したヘルニアは、時間がたてば自然になくなる場合がほとんどです。

「あなたの腰痛には手術は必要ありません。痛みを減らすには、怖がらずに動くことがいちばんの薬です」というように、「腰痛は怖くない!」というシンプルなメッセージを短い映像に込めました。

この5本の映像を、慢性的な腰痛のあるNHKネットクラブの会員175人に10日間見てもらいました。その結果、38%(68人)が腰痛の改善を示しました。映像を見ることで得た正しい知識によって、腰痛に対する不安や恐怖が破和され、約4割の腰痛が改善されたのです。

つまり、これらの映像で、腰痛について正しい理解が進めば、腰痛に対する無用な恐怖や不安が減少します。

その結果、恐怖回避思考が解消。機能低下を起こしていた脳内の痛みを抑制する働きが回復して、腰痛が改善してきたと考えられるのです。

腰をそらすことが脳のリハビリにもなる

この実験には続きがあります。残りの6割(107人)に参加を集い、「これだけ体操」を2週間試してもらいました。

107人中、実際に参加した人が70人です。これだけ体操をしてもらった結果、32人の腰痛が改善しました。先の38%に足すと、175人中57%に効果があったことになります。

これだけ体操は、まず腰痛の引き金となる腰の不具合を調整します。それと同時に脳機能の不具合も調整するのです。

これだけ体操では、腰痛持ちの人があえて避ける「腰を前に突き出してそらす」というポーズを取ります。このポーズを含む体操をくり返し行うことで、腰を動かしても痛くないという実感が積み重なるのです。

つまり、これだけ体操を使って脳のリハビリを行っていることにもなるといえるのです。

脳のリハビリをくり返すことで、腰痛の有力な誘因となっている不安や恐怖を打ち消す効果があります。それが脳の痛みの抑制機構を正常に機能させることにつながります。そして、必要以上の痛みを感じなくなり、腰痛が改善していくのです。

松平先生たちがこのキャンペーンを通じて伝えたかったのは、恐怖回避思考を減らし、腰を大事にし過ぎず、適切に腰を動かす習慣をつけてもらうことでした。

腰痛予防には「安静が第一」と考えている人は、まだまだ少なくありません。しかし、考え方さえ変えれば、腰痛持ちからの脱脚は難しくないのです。



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